From Chef
ハッピーな食卓の象徴、料理の発想の源にも
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鍋いろいろ

 adding:blueの店内には、いろいろな鍋が置いてあります。もちろんすべて本物、実際に使っています。例えばこの写真の一番手前にあるのは美濃焼のタジン鍋。奥に見える鮮やかな緑色のタジン鍋はル・クルーゼの製品。タジンとはモロッコの煮込み料理ですが、元々はこの円錐形のフタをした鍋自体を意味する言葉だそうです。モロッコは歴史上、フランスと深い関わりがあるため、例えばパリなどではモロッコ料理の店がたくさんあり、タジンが提供されています。
 モロッコ料理と言えば、そう、クスクスのほうがもっと有名かな。アルミ製の2段式の鍋、クスクシエールは、小さな穴の開いた上の段の鍋にスムール(クスクスの粒)を入れ、下の鍋には具やソースとなるシチューを入れて火にかけます。そうすると、シチューの蒸気によってスムールが蒸し上げられる仕組みで、まさに一石二鳥な鍋です。
 最近、レストラン業界で人気が高いのがストウブの鍋。厚みのある鋳物の鍋で、煮込みだけでなく、オーブンで肉を焼く時も、この鍋に入れると、火の当たりがやわらかくなり、ジューシーに仕上がります。
 可愛い花模様が描かれた鍋はアルザスの伝統的な陶器で、これで肉や野菜を煮込んだ家庭的な料理が「ポテ」。なかでも、アルザスの白ワインを加え、鍋とフタのつなぎ目をパン生地で密閉させ、オーブンで火入れしたものは「ベックオフ」と呼びます。昔は、作業を終えたパン屋の窯の余熱を利用して作られたそうです。
 色や形、材質は多種多様な鍋。でも、鍋を囲んでの団らんは何より楽しく豊かな気持ちになれるのは世界共通ではないでしょうか。鍋はハッピーな食卓を象徴する道具だと僕はいつも思っています。だから、adding:blueでは、鍋ごと提供する料理が多いのです。それに、僕は鍋を見ていると、料理の発想が広がってくるんですよ、ああ、この鍋でこんな料理を作って出したいなあって。これからもいろいな鍋に出会いたいですね。



星野 直寛 星野 直寛(ほしの なおひろ)
1971年生まれ、群馬県出身。
‘89年、高崎ビューホテルより料理の道に入る。
‘96年より坂井宏行氏の「ラ・ロシェル」を皮切りに都内のレストランで修業。
‘99年表参道「オン・ザ・スプーン」、’02年「ル・プチ・リュタン」などでシェフを務めた後、’08年に渡仏。クリスチャン・コンスタン氏の「ル・ヴィオロン・ダルグル」をはじめ、数々のレストランにて働く。
’10年11月よりadding:blueシェフに就任。
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