From Chef
20年前に出会った美味しさを今に伝える
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白いブーダン
 僕は、魚や肉は骨つきの塊で豪快に調理することが比較的多いですが、ときにはこういうデリケートな料理も作ります。え、柄に合わない?  いや、こう見えて案外、繊細なんですよ! (笑)

 ブーダンというと、普通は豚の血入りの黒いソーセージ、ブーダン・ノワールが知られていますが、魚介や鶏肉を使った白いブーダン・ブランもあります。この料理と出会ったのは、まだ見習いの21歳の頃。フランスのMOFシェフ、リヨンのホテル・ソフィテル総料理長のマーク・アリックス氏が来日し、僕が働いていたレストランで、オマール海老のブーダンを作りました。これが実に美味しくて、ああ、フランス料理っていいなあ、僕もいつかはこういう料理がきちんと作れるようになりたい、と憧れたのでした。

 オマール海老に限らず、カニでも美味。ほぐしたズワイガニと、軽く加熱してトロトロにした卵を合わせ、ラップでソーセージ状にして蒸します。いわば、フレンチ版“カニ玉”。オマール海老のブーダンには、ソースもやはりオマール海老でだしを取って、クリームやコニャックで仕上げたアメリケーヌですが、このブーダンはカニなので、だしはワタリガニで取ります。活きたワタリガニを使用するのが最も重要で、死んだカニではイメージする理想の味に仕上がりません。

 白いブーダンと出会ってから20年以上の月日が経ちました。クラシックなイメージのせいか、今ではあまり見かけない料理ですが、僕は決して忘れることなく、年に1度は作ります。特に寒い季節が近づくにつれ、その優しい食感とコクのある味わいが恋しくなり、「よし、そろそろ作ろうか」となるのです。



星野 直寛 星野 直寛(ほしの なおひろ)
1971年生まれ、群馬県出身。
‘89年、高崎ビューホテルより料理の道に入る。
‘96年より坂井宏行氏の「ラ・ロシェル」を皮切りに都内のレストランで修業。
‘99年表参道「オン・ザ・スプーン」、’02年「ル・プチ・リュタン」などでシェフを務めた後、’08年に渡仏。クリスチャン・コンスタン氏の「ル・ヴィオロン・ダルグル」をはじめ、数々のレストランにて働く。
’10年11月よりadding:blueシェフに就任。
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